「悪魔に魅入られし娘」 −掲載話・題名より
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18話についての、「感想」の部です。
「考察」の部とは違い、感じたままに書き綴っています。
今回のお話は、感想という「けり」をつける行為すら惜しかったので
伸ばし伸ばしにしていたのですが、
もう二週間経ちますし、そろそろ良いかなと思い書くことに決めました。
そして18話を読んでみて、改めて3巻と17話にも触れています。
『回転銀河』1巻、3巻、5巻収録予定・17〜18話の内容が
ネタばれしています。また、長文なのでご注意ください。
−海野つなみ | trackback(0) | comment(0) |
「悪魔に魅入られし娘」 −掲載話・題名より
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このお話を読むことを物凄く楽しみにしていたので、
感想も半端でない量になってしまいました。
なので、ちょっと理屈っぽく読んだ「考察」の部と
感情の赴くままに書き散らかす「感想」の部という、
2つの記事に分けることにしました。
この記事は「考察」の部です。
趣味・辞書引きなので、辞書の引用など交えつつ書いてあります。
『回転銀河』3巻と、5巻収録予定の18話の内容がネタばれしています。
そして超・長文ですので、ご注意ください。
−海野つなみ | trackback(0) | comment(0) |
「今から七百余年前、時代に翻弄されながらも
恋に自分に正直に奔放に 生きた女性がいた。」 −裏面あらすじより
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『回転銀河』の次に時代物?!と、はじめは正直驚きました。
でも、よくよく考えると海野さんらしいです。
「読者」と、そしてもっと言えば「時代」が追いついて行かなければならない
創作者の存在は、大変貴重だとも思います。
:::: あらすじ ::::
古典『とはずがたり』を漫画化したのが、『後宮』全5巻です。
'07年11月に最終巻が刊行され、既に完結されています。
舞台は鎌倉時代、御深草院(ごふかくさいん)の後宮。
主人公は、大納言という位の高い父を持つ姫・二条(にじょう)。
「その二条を四歳で御所にひきとり、
十四歳で無理やり自分のものとした
御深草院の想いとは?!」 −裏面あらすじより
十四歳で無理やり自分のものとした
御深草院の想いとは?!」 −裏面あらすじより
つまり、鎌倉時代版・光源氏と若紫のお話。
ただし『源氏物語』の紫の上と違って、
二条は夫以外にも複数の男性を愛し、愛され生きた女性なのです。
したがって『後宮』で描かれるその半生は、波乱万丈そのもの。
:::: みどころ ::::
『後宮』には、三種類の「極」があると思います。
一、「静」と「動」
私は今まで、海野さんは「静」の作家だと思っていました。
描かれる出来事自体は些細だけれど、
それに対する感受性が鋭く、心理描写が優れているからです。
しかしながら、この『後宮』では
原作に従った激しい出来事という、「動」の側面が加わっています。
そして当然、持ち味の「静」の描写力も発揮され、
まさに息つく暇がない、濃厚な内容に仕上がっているのです。
二、「時代性」と「普遍性」
まず、鎌倉時代だからこその事柄があります。
二条の夫となる御深草院は、天上人なので
後宮に多くの妻を娶っています。
そして二条自身も、複数の男性と関係を持つことになります。
そのため現代ではあり得ないほど
多くの男女と、それぞれの心模様が入り乱れていくのです。
その有様が、素晴らしい台詞とモノローグで描きあげられています。
ですが、何百年前でも人間は人間。
彼らの思いは、現代に生きる者にも十分通ずるものなので
読んでいて胸が苦しくなるほどです。
三、「苦」と「楽」
二条と、彼女に関わる男性、その周辺人物はおしなべて
恋や、生きることの「苦しさ」に打ちのめされています。
海野さんの作品を読んで、
これほど重く、苦しく、やるせない気分になったことはありませんでした。
その点でも、『後宮』は「新境地」と言えるのではないでしょうか。
でもずっと苦しいばかりではありません。
従来作でも見られる「小ネタ」は健在で、時代ものだけに驚かされるネタも多く
まるで「トリビア」のようで、大変楽しませてくれます。
やっぱり、漫画を読む上で笑いは欠かせません。
:::: わたくしごと ::::
一、まとめ読みが好い
私ははじめ、1巻から発売される度に買い揃えていたのですが、
最新刊を読むときに、前巻までの内容を思い出すのが難しく
3巻まで出た時点で一旦揃えるのをやめてしまいました。
そして最近になって、海野さんの作品にハマり直したのを契機に
改めて揃えなおし、全編通して読んでみたところ
その面白さに気づくことが出来ました。
ちなみに、一晩でまとめ読みをしたので
夜の趣が感情移入に拍車をかけ、
読み終わってもなかなか気分を切り替えられませんでした。
その位、心を揺り動かす力のある作品なのだと思います。
二、ある程度流し読みが好い
古典が原作なので、読む上で
最低限の時代背景・政治・習わしの知識が要りますよね。
もちろん作中で、読み手のために砕けた解説が挿入されているのですが
真面目に全て覚えようとすると大変。
なので、基本的な人間関係さえ分かっていれば何とかなる!と
割り切って読むことにしたら、ずいぶん楽になりました。
ところどころで登場する和歌も、
取りあえず現代語訳を読み、気が向いたら古語部分も読む
という様式が、私には合っているみたいです。
古語も和歌も大好きなんですけど、やはり本筋を追うのが最優先ですね。
−海野つなみ | trackback(0) | comment(0) |
「私だけを信じ 慕って育つがいい 可愛い 私の若紫」 −第2話より
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初恋の人に縁の、面差しの似た少女を手元に引き取り
女となるそのときまで大事に育てる。
光源氏の若紫のときも思いましたが、
この「後宮」でそれに相応する関係である
御深草院(ごふかくさいん)が二条(にじょう)に対して持つ思いも、
なんと歪んだ欲望なのでしょう。
先の一文は、
その欲望の果てに二条の夫となる彼、通称・御所(ごしょ)様のもの。
身分こそ高いものの、両親の愛を知らずに育ったため
そこからくる歪みは一通りではありません。
「なぜ私は愛されぬのです」
そんな彼に残された一筋の望みが、二条との関係でした。
はたして、ひとりの人間を自分だけのものにすることなど出来るのか―
二条が関係を持つことになる男性陣の中で、
私はこの御所様を贔屓してます。彼のひねくりっぷりが好きです。
「…仕方ありません 恋に落ちてしまったのですから」 −第10話より
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表紙・言葉は、二条の初恋の君・実兼(さねかね)様。
海野さんが「あとがき」で述べられているように、王子様的な位置づけ。
他の「キレてる」男性陣の中にいて、
健全で少女漫画のヒーローらしい彼は、何だか安心させてくれます。
が、やってることは綱渡り。
主君の妻と通じる、という危険を冒してまで、二条を愛します。
それでも、頭の切れる彼なら何とか隠し通してくれるのでは?と
どこか頼れる気持ちにさせてくれるのが、かえって罪作りかも知れません。
「許せ こんなにも そなたを愛してしまった私を」 −第14話より
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表紙・言葉は、二条の夫・御深草院の異母弟でもある
性助法親王(しょうじょほっしんのう)、通称・御室(おむろ)。
つまりお坊さんなのですが、立場を省みず二条を愛してしまいます。
この人物、
海野さんが原作を読まれたとき、「怖っ!」と思われたらしいですが
私がこの巻を読んで思ったのも同じことでした。
「怖っ!」という第一印象は最後まで拭えず、
登場する度、お化けでも出たかのような反応をしてしまいます。
なにせこの法親王、とにかく二条一筋。
追いかけられると男は逃げたくなる、とか巷でよく言いますが
女とて同じですよね。
法親王のように、一途に自分だけを思われるのも怖くて、
でも御所様たちのように、自分以外の女性がいるのも嫌で。
そんな、二条の身勝手とも言える思いが、現代にも通ずるリアルさです。
「思わぬ相手に抱かれて そなたは思い知る
そなたが本当に愛しているのは 誰なのかを」 −第22話より
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男の嫉妬、恐るべし。
いや男性一般論でなく、御所様のがとりわけ、ですね。
上記の言葉の場面を初めに見たときは、
どんなプレイだよ!とつっ込みたくなったのですが
その根源にある切ない願いとそれが満たされない空虚さを思うと、
何とも言い得ぬものがあります。
歪みきった御所様による、裏切った二条への非情な「仕打ち」が
四巻最大の見所、かも。
(でもはっきり言って、女性としては許せないことばかり)
「この 後宮という鳥籠の中から そなたを解放してやる」 −第26話より
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上の思いが、御所様の最大の愛のかたちなのか。
だとしたら、何と悲しいものでしょう。
どこまでもすれ違う二条と御所様が
見ていて居たたまれなく、ひどく切ないです。
−海野つなみ | trackback(0) | comment(0) |
「こんな気持ちを 私 一体誰から教えてもらったの」 −第3話より
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夫となる御深草院(ごふかくさいん)との契りの後、
女になった二条(にじょう)が、心の複雑さを知った一瞬です。
大人になるほど、心は複雑になるもの。
この先彼女がさらに知ることになる、色々の思いを暗示しているかのようです。
「実兼様 私の初恋の人 私の もう一人の新枕の君」 −第7話より
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初恋は、二度あると言います。
はじめは少女として、つぎに女性として。
二条にとって、初恋の相手は二度とも実兼(さねかね)様だったのですね。
けれども彼女は夫のある身。
その消しようのない事実が、「もう一人の」という語から伝わります。
「今はもう その 思いの深さが ただただ辛く 苦しい」 −第18話より
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女心は、時として容赦なく残酷ですね。
出家の身でありながら、
二条を見初めて一途に愛す性助法親王(しょうじょほっしんのう)と、
その思いを疎ましくすら感じ始めた二条。
上に引いた台詞にも増して残酷さを感じたのが、
作中の二条の冷め切った表情です。描写が上手いな、と感じ入りました。
話の大筋とはあまり関係ないのですが、三巻内に印象的だった言葉があります。
「女の敵は 女なれど
女というものは 誰よりも 女の味方でもあるのです」
女というものは 誰よりも 女の味方でもあるのです」
これも真理を突いていると思います。
世では、女同士は怖い、などと言われがちですが
女性である憂いを理解しあえるのも、他ならぬ女同士なのです。
ましてや鎌倉時代の婚姻制度においては、互いへの妬みと同情心は
今よりも強かったのでしょうね。
「私にだって 心があるのに」 −第24話より
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この一言は、痛く心に来ました。
大勢いる女の中の一人として、ときに政の道具として、
弄ばれる哀しさ。
素直な言葉口が、表している辛さとかけ離れていて、かえって哀しみを煽ります。
「それでも 引き止めて欲しゅうございました」 −第28話より
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二条の、口に出せない思い。
最終巻は、女心に泣ける場面がたくさんあって
最後まで読んで良かったと思わされました。
−海野つなみ | trackback(0) | comment(0) |
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