2008/02/22 (Fri) 感想・回転銀河(5・収録予定) 18話 −海野つなみ

「悪魔に魅入られし娘」 −掲載話・題名より


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(2008/02/08)
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18話についての、「感想」の部です。
「考察」の部とは違い、感じたままに書き綴っています。

今回のお話は、感想という「けり」をつける行為すら惜しかったので
伸ばし伸ばしにしていたのですが、
もう二週間経ちますし、そろそろ良いかなと思い書くことに決めました。

そして18話を読んでみて、改めて3巻と17話にも触れています。


『回転銀河』1巻、3巻、5巻収録予定・17〜18話の内容が
ネタばれしています。また、長文なのでご注意ください。



:::: 読む前 ::::

天野兄弟と和倉ちゃんの新しい話が読める!と
ものすごく楽しみで期待していた反面、若干不安もありました。

というのも、3巻の11話の
「なんでもいいや 呼び方なんて」という台詞と、
そんな兄と和倉ちゃんの関係が何とも言えず素敵で大好きだったので
これ以上、何か進展してしまうのが勿体ない気がしていたのです。

そんなわけで、18話を読む前にこうあって欲しい!と望んでいたことは
1、「なんでもいいや 呼び方なんて」の関係を裏切らないで欲しい
2、でも、少しラブが見たい
3、出来れば「兄⇒和倉ちゃん」が見たい

…という、とても我が儘なものでした。
そして読み終えた直後に思ったことは、
“これ、最高!!”でした。さすがは海野先生!

以下、読んでみての感想です。




:::: 読んだ後 ::::


◇表紙&扉

Kiss本誌の予告カットを見たときから綺麗な表紙だな、と思っていましたが
本物もやはり素敵でした。
淡い色使いと植物が爽やかで、天野兄弟は美麗ですね。

その表紙よりさらに好みだったのが、巻頭カラーの扉。
構図、絵柄、色使いのどれをとっても大好きです。
この絵が5巻の表紙になると嬉しいな。


◇はじまり

語りが弟、というのにまず驚きました。そう来ますか!
そして、階段の上から「和倉」と言う弟を見たとき
こんな風に呼び止められてみたい!と思ってしまいました。

階段での会話では、
和倉ちゃんがどうやって双子を見分けるのかという謎が解けて嬉しかったです。
しかもその理由が良い!兄、ニヤニヤしてしまっているとは。

観察しているとこの双子の場合、
ニヤニヤは嬉しい・楽しいという感情の表れみたいなので
バカにしてるのじゃなく、嬉しくて仕方ないんでしょうね。

双子の家の場面では
「……優が可愛いから教えないv」という弟の台詞がツボです。
そして、なんで弟にニヤニヤされるのか知りたい兄が
翌日(?)被服室の和倉ちゃんを訪ねたのが、17話の場面なのですね。


◇18話を読んで、改めて17話の感想

謎だった和倉ちゃんと弟の会話が18話で分かった後でも、
17話の兄と和倉ちゃんの、やりとりの真意を理解するのは容易でないです。

最も気になるのは、

「わたしを通してお互いを探り合うのやめてくれる?」
「思うに お互い 同じこと知りたがってるような気がするよ」

の、双子が知りたがっている「同じこと」です。

これの真相は、和倉ちゃんを通してお互いを探り合っているのではなく
お互いが和倉ちゃんを探り合っている、なのでしょうか。

肝心の何を探り合っていたかは、
双子が和倉ちゃんに言った「おんなじこと」がヒントになりそうです。
「おんなじこと」は、双子のもう一方と最近仲が良くないか、ですよね。
弟は、「そういうところが優のお気に入りなんだろうな」という流れで言っていて、
兄は、和倉ちゃんが弟に言った内容を教えてもらえなかった後に言ってます。

…ということは、ざっくり捉えると
和倉ちゃんが兄をどう思っているか、ということなのでしょうか。
もしくは、和倉ちゃんが兄との関係をどう思っているか、とか。

やはりなかなか難しいです。
ただ、「同じこと知りたがってるような気がするよ」と言われた後に見せた
兄の的を点かれた表情が、何やら大事な意味を持っていそうです。


そして、18話で和倉ちゃんについて弟と話したあとに
17話の被服室の場面があるのだと思うと、17話の見方が変わってきます。

兄が和倉ちゃんに対して言った「そういう態度?」やら、
和倉ちゃん曰く「それ セクハラですから!」という髪いじりなんかも
執着っぷりときうか、気に入りっぷりが増して見えますし、
「おまえ程度のルックスで」と外見にやたらとこだわるのも意味深です。


◇田所くん

“和倉ちゃんに恋の予感 ⇒ 兄の嫉妬”
という構図は、そうなれば面白いなあ程度に期待してはいたのですが
まさか本当に読めるとは。

この田所くん、スポーツ系×黒髪×硬派なビジュアルが
妙に和倉ちゃんにお似合いです。後輩というところも似合ってます。

田所くんが一方的に和倉ちゃんを覚えていたこと、
加えて「先輩がマネージャーのままだったら…」と言っていることから
彼の方はまんざらでもない感じがします。

でも和倉ちゃんは、「マネージャーのままだったら」と言われた後
ぱっと見ほだされているようですが、次の瞬間に恋とは程遠いことを言ってます。
こういう所が、兄に言わせれば「天然」なのでしょう。


◇松崎くん

17話で和倉ちゃんが元サッカー部女子マネだったことが明かされたとき、
あれ、じゃあ何で松崎くんの存在を知らなかったの?と訝っていたら
今回ちゃんと理由が分かりました。

そして何でいまさら彼のエピソードが出てくるの?というのは
読んで何度目かで、やっとその意味に気づきました。

女子マネが「部内で ダントツ カッコよかったから」という理由で
松崎くんにキャーキャー言っていたことに関する、
「見る目ねーなーって…」という田所くんの見解が
重要なポイントだったのですね。

外見の良さだけで選んでいた女子マネ陣の姿は、
「可愛くなければ君に 何の価値もない」彼女を選んでいたり、
見劣る存在という根拠で、気に入っても和倉ちゃんを「自分のもの」にしない
兄の姿が重なります。

ただし女子マネ陣と違って、兄は“見る目はある”のですね。
松崎くんの場合は、外見は良くても内面で嫌っていたわけですし、
和倉ちゃんについても、内面に惹かれているのですから。

それでも外見という条件がどうしても譲れないらしい兄。
外見が良いという自負・プライドが、自分自身を縛ってしまっているなんて
ちょっと可哀相にすら思えてしまいます。


◇被服室の二人

今回で唯一、兄と和倉ちゃんが一緒にいる場面。
一場面しかないからこそ、かえって強く印象に残ります。

二人きりになるためだけに、部長とトモちゃんに裏工作をするなんて
器用なんだか、不器用なんだか。
この日に限って二人きりになりたかったのは、
朝に和倉ちゃんが男といる姿を目撃したことがきっかけ、で間違いないですね。

他の男と二人でいるのを見たから自分も二人きりになりたかったのか、
二人きりのときに探りを入れたかったのか。
後者だとしても、探りを入れるような質問はしてないので
何がしたかったのかよく分かりません。
もしかしたら、本人にも分かってないかも知れませんね。


そもそも、被服室に通い詰めて和倉ちゃんの洋裁姿を
ひたすら“眺めてる”こと自体、何がしたいのか分からないです。

ただ、兄の支配欲にかられたキスという事件(?)のあと
和倉ちゃんは「変わってなくてよかった」と思っていますが、
兄にしてみれば、事件後は被服室を
「他に行くところがない」でなく「行くところ」として選ぶ変化があったと思います。
それこそが、執着という底なし沼(?)の始まりだったのでしょうか。

和倉ちゃんの方も、二人きりだとさすがに照れるみたいですね。
二人の雰囲気が11話とは変わっているように見えました。
何にせよ、兄の和倉ちゃんに対するちょっかいの出し様が
小学生男子の好きな子に対するそれにしか見えません。


そして、読む前に期待していた「少しラブが見たい」という希望は
この場面の最後の一コマで叶えられました。
たったの一コマ、しかも台詞も動きも全くないというのに。

何なのでしょう、この甘ったるく熱っぽい眼差しは!

これが好きな女の子を見る視線じゃなくて何なのだろう、と思いますよ。
語られない想いを表すかのような花まで咲いていますし。


◇芽を出す前に摘んだあと

上の見つめている場面で、この方法を採ることを決めたと思われます。

弟が考えるように、和倉ちゃんにとってダメージが少ない方を選んだのなら、
この“思いやり”に溢れた選択が本当に悪魔らしくないです。

「この先どうする? 和倉」という弟の問いに対して
「……面倒くさいな」と言ってますが、
登校中に一緒にいる程度で今後も邪魔するなら、そりゃ面倒だし大変でしょう。

弟の「Sだなあ」という台詞を見て思い出したのが、
1巻・2話でイズミが池上くんのことを「ドSの国の王子様」と言っていたこと。
池上くんがドSだとしたら、
弟はドドS、兄にいたってはドドドSくらいな感じです。(いや、もっと?)

そして、飛び出した言葉

「……ああ そっか
 あいつが俺を 好きになればいいんだ」

この「ああ そっか」という、たった今思いついた感じと、
あくまで器用な名案だと本人は思い込んでいるところが、何とも良いです。

そんな兄とは対照的に、弟はめちゃくちゃ驚いてますね。
初見のときは、兄側の理屈に目眩まされて
弟がそこまで驚いた訳が分からなかったのですが、

「一周回って とんでもなく不器用なことを言っている」
「いちばん スタンダードな愛情の欲求じゃないか」

を読んだら、目から鱗が落ちました。本当にそのとおりです。
そして弟が堪え切れず笑い出してしまうのと、

「もしかして僕は今
 今まででいちばん 優のことが好きかもしれないよ」

という言葉に、激しく同調してしまいます。

兄の華麗なる恋愛遍歴と別れ方は、器用すぎて高校生と思えないくらいなのに
この和倉ちゃんに対する不器用さは、間逆の意味で高校生と思えない。
兄弟のどちらも少しずつ変化しているようですが、
弟が大人になっているのに対し、兄は子供になっているように見えます。


◇18話を読んで、改めて3巻の感想

兄が和倉ちゃんに執着する理由は、自分なりに「考察」の部で考えたのですが、
それを書いた後、双子のイメージに影響を与えたという
アゴタ=クリストフの『悪童日記』を読んでみて、改めて感じたことがあります。

弟が彼女に夢中になる以前の9話までの双子は、
『悪童日記』の双子について説明する母親の言葉を借りると

「(前略) 二人で、ただ一つの、分かちがたい人格を形づくっているのよ」

だったのですね。
彼女同士が友人、という異常なまでのシンクロぶりもこれで納得できました。

それが11話になって、弟の人格が自分から離れていってしまった兄。
これは、全く大げさでなく「地球が引っくり返った」ような感覚だったのでしょう。
そんな兄にとって二度とないような激変期に、
唯一の「行くところ」として選ばれた和倉ちゃんは、かなり特別な存在なはず。
それが彼を執着せしめている大きな要因なのかなあ、と思いました。


◇和倉ちゃん

兄の執着っぷりはよく分かりましたが、和倉ちゃんの方は
17話で部長に「あんな憎まれ口ばっか言うなら 来なきゃいいのにね」
なんて言ってるほど、執着が少なそうに見えます。

でも最後、弟に

「――ああ でも もう 私も捕まってるかもな」

と言っているのを見て、何だかきゅんとさせられました。
常に中立なのに、兄に対しては執着という“らしくない”感情があるのですね。
ただし、兄からの並々ならぬ執着には全く気付いてない模様。

弟は、ミス・中立(ニュートラル)の「楽しむ術を見い出そうとする」姿勢に気付く前に
何度も「可哀相」「哀れ」と繰り返しますけど、
私的には、気付いていない和倉ちゃんよりむしろ
気付いてもらえない兄が哀れ。
でもこの、兄⇒和倉ちゃんのとんでもなく独り相撲なところが、最高にツボです。

それにしても兄と和倉ちゃんは、互いに何かと“無自覚”過ぎますね。
逆にそんな風に無自覚だからこそ、
双方の想いを知った弟が言っているとおり、本当にこの先が「楽しみ」です。


◇これから

『回転銀河』は最低あと2話は続くらしいですが、
そのうち一つは『デイジー*ラック』の続編と確定してますし
守口と恭子のエピソードもやるっぽいし…と考えると
この二人のお話はこれでお終いなのでしょうか。
だとしたら、最後の柱文は罪作り。これでは続きが読めると期待してしまいます。

私は、漫画でも小説でもオムニバスという形態が一番好きなので
短編の続きが見れないことなんて慣れっこのはずなのに、
この双子(主に兄)と和倉ちゃんに関しては、もっと続きが見たくなります。

連載が再開して、2話分読めただけでもすごく幸せなのに、
さらに読みたいなんて我ながら強欲です。
それだけ、登場人物が魅力的なのですね。

『回転銀河』は何度読んでも新しい発見がある作品なので
読み飽きることはないのですが、やっぱり出来れば続きが見たい!
その辺りは、雑誌のアンケートで熱く主張しようと思ってます。


*本文内引用、『回転銀河』1巻、3巻、5巻収録予定・17話、18話
*一部引用、『悪童日記』、アゴタ=クリストフ作、堀茂樹訳、早川書房



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