2008/02/06 (Wed) アルバム未収録シングル −椎名林檎

「態(ワザ)とらしい空の色も全部疎ましくて」 −『愛妻家の朝食』より

真夜中は純潔真夜中は純潔
(2001/03/28)
椎名林檎

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(1) 夜=真夜中は純潔
(2) 昼=シドと白昼夢(ハクチューム)
(3) 朝=愛妻家の朝食

と、朝昼晩をモチーフにした3曲が収録されています。
表題曲(1)と初披露曲(3)は
いずれもアルバム未収録ながら、素晴らしい作品です。

何せ、アレンジが豪華。
『真夜中は純潔』は東京スカパラダイスオーケストラ、
『愛妻家の朝食』はアコーディオン奏者のcoba氏が参加しています。

どの曲も聴き心地が良いのが、このシングルの特徴だと思います。


【効能】
・何とはなしに空虚な気分

【用法・用量】
・朝・昼・夜と、それぞれの時間帯に合った曲を聴くと、気分が盛り上がります。




「めしませ つみのかじつ」 −『りんごのうた』より

りんごのうた (CCCD)りんごのうた (CCCD)
(2003/11/25)
椎名林檎

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椎名林檎と東京事変の活動を分かつ、「節目シングル」。

『りんごのうた』は、NHK教育の「みんなのうた」として放映された為
歌詞は全て平仮名なのですが
その曲調と意味深な詞の内容は、妙に艶っぽいです。

この曲は『林檎の歌』として、
東京事変のアルバム『教育』には収められていますが
名称の表記が違うだけに、アレンジも大違い。

カップリングの2曲目『リンゴカタログ〜黒子時代再編纂』は、
それ以前に発表された曲の音と詞を
コラージュのようにつなぎ合わせて出来ていて、
尚且つ一つの曲としても聴けるという、大変な意欲作です。


【効能】
・物寂しい気分

【用法・用量】
・秋が冬に移ろう瞬間に聴きたいです。

−椎名林檎/東京事変 | trackback(0) | comment(0) |


2008/02/05 (Tue) 全体として・後宮 −海野つなみ

「今から七百余年前、時代に翻弄されながらも
 恋に自分に正直に奔放に 生きた女性がいた。」 −裏面あらすじより


後宮 1 (1)後宮 1 (1)
(2006/05/12)
海野 つなみ

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『回転銀河』の次に時代物?!と、はじめは正直驚きました。

でも、よくよく考えると海野さんらしいです。
「読者」と、そしてもっと言えば「時代」が追いついて行かなければならない
創作者の存在は、大変貴重だとも思います。



:::: あらすじ ::::

古典『とはずがたり』を漫画化したのが、『後宮』全5巻です。
'07年11月に最終巻が刊行され、既に完結されています。

舞台は鎌倉時代、御深草院(ごふかくさいん)の後宮。

主人公は、大納言という位の高い父を持つ姫・二条(にじょう)

「その二条を四歳で御所にひきとり、
 十四歳で無理やり自分のものとした
 御深草院の想いとは?!」 −裏面あらすじより

つまり、鎌倉時代版・光源氏と若紫のお話。
ただし『源氏物語』の紫の上と違って、
二条は夫以外にも複数の男性を愛し、愛され生きた女性なのです。

したがって『後宮』で描かれるその半生は、波乱万丈そのもの。



:::: みどころ ::::

『後宮』には、三種類の「極」があると思います。


一、「静」と「動」

私は今まで、海野さんは「静」の作家だと思っていました。

描かれる出来事自体は些細だけれど、
それに対する感受性が鋭く、心理描写が優れているからです。

しかしながら、この『後宮』では
原作に従った激しい出来事という、「動」の側面が加わっています。

そして当然、持ち味の「静」の描写力も発揮され、
まさに息つく暇がない、濃厚な内容に仕上がっているのです。


二、「時代性」と「普遍性」

まず、鎌倉時代だからこその事柄があります。

二条の夫となる御深草院は、天上人なので
後宮に多くの妻を娶っています。
そして二条自身も、複数の男性と関係を持つことになります。

そのため現代ではあり得ないほど
多くの男女と、それぞれの心模様が入り乱れていくのです。
その有様が、素晴らしい台詞とモノローグで描きあげられています。

ですが、何百年前でも人間は人間。
彼らの思いは、現代に生きる者にも十分通ずるものなので
読んでいて胸が苦しくなるほどです。


三、「苦」と「楽」

二条と、彼女に関わる男性、その周辺人物はおしなべて
恋や、生きることの「苦しさ」に打ちのめされています。

海野さんの作品を読んで、
これほど重く、苦しく、やるせない気分になったことはありませんでした。
その点でも、『後宮』は「新境地」と言えるのではないでしょうか。

でもずっと苦しいばかりではありません。

従来作でも見られる「小ネタ」は健在で、時代ものだけに驚かされるネタも多く
まるで「トリビア」のようで、大変楽しませてくれます。

やっぱり、漫画を読む上で笑いは欠かせません。




:::: わたくしごと ::::


一、まとめ読みが好い

私ははじめ、1巻から発売される度に買い揃えていたのですが、
最新刊を読むときに、前巻までの内容を思い出すのが難しく
3巻まで出た時点で一旦揃えるのをやめてしまいました。

そして最近になって、海野さんの作品にハマり直したのを契機に
改めて揃えなおし、全編通して読んでみたところ
その面白さに気づくことが出来ました。

ちなみに、一晩でまとめ読みをしたので
夜の趣が感情移入に拍車をかけ、
読み終わってもなかなか気分を切り替えられませんでした。

その位、心を揺り動かす力のある作品なのだと思います。


二、ある程度流し読みが好い

古典が原作なので、読む上で
最低限の時代背景・政治・習わしの知識が要りますよね。
もちろん作中で、読み手のために砕けた解説が挿入されているのですが
真面目に全て覚えようとすると大変。

なので、基本的な人間関係さえ分かっていれば何とかなる!と
割り切って読むことにしたら、ずいぶん楽になりました。

ところどころで登場する和歌も、
取りあえず現代語訳を読み、気が向いたら古語部分も読む
という様式が、私には合っているみたいです。

古語も和歌も大好きなんですけど、やはり本筋を追うのが最優先ですね。


−海野つなみ | trackback(0) | comment(0) |


2008/02/05 (Tue) 男性でみる・後宮 −海野つなみ

「私だけを信じ 慕って育つがいい 可愛い 私の若紫」 −第2話より

後宮 1 (1)後宮 1 (1)
(2006/05/12)
海野 つなみ

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初恋の人に縁の、面差しの似た少女を手元に引き取り
女となるそのときまで大事に育てる。

光源氏の若紫のときも思いましたが、
この「後宮」でそれに相応する関係である
御深草院(ごふかくさいん)が二条(にじょう)に対して持つ思いも、
なんと歪んだ欲望なのでしょう。


先の一文は、
その欲望の果てに二条の夫となる彼、通称・御所(ごしょ)様のもの。

身分こそ高いものの、両親の愛を知らずに育ったため
そこからくる歪みは一通りではありません。

「なぜ私は愛されぬのです」

そんな彼に残された一筋の望みが、二条との関係でした。
はたして、ひとりの人間を自分だけのものにすることなど出来るのか―


二条が関係を持つことになる男性陣の中で、
私はこの御所様を贔屓してます。彼のひねくりっぷりが好きです。




「…仕方ありません 恋に落ちてしまったのですから」 −第10話より

後宮 2 (2) (講談社コミックスキス)後宮 2 (2) (講談社コミックスキス)
(2006/09/13)
海野 つなみ

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表紙・言葉は、二条の初恋の君・実兼(さねかね)様。

海野さんが「あとがき」で述べられているように、王子様的な位置づけ。
他の「キレてる」男性陣の中にいて、
健全で少女漫画のヒーローらしい彼は、何だか安心させてくれます。

が、やってることは綱渡り。
主君の妻と通じる、という危険を冒してまで、二条を愛します。

それでも、頭の切れる彼なら何とか隠し通してくれるのでは?と
どこか頼れる気持ちにさせてくれるのが、かえって罪作りかも知れません。




「許せ こんなにも そなたを愛してしまった私を」 −第14話より

後宮 3 (3) (講談社コミックスキス)後宮 3 (3) (講談社コミックスキス)
(2007/01/12)
海野 つなみ

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表紙・言葉は、二条の夫・御深草院の異母弟でもある
性助法親王(しょうじょほっしんのう)、通称・御室(おむろ)
つまりお坊さんなのですが、立場を省みず二条を愛してしまいます。

この人物、
海野さんが原作を読まれたとき、「怖っ!」と思われたらしいですが
私がこの巻を読んで思ったのも同じことでした。
「怖っ!」という第一印象は最後まで拭えず、
登場する度、お化けでも出たかのような反応をしてしまいます。


なにせこの法親王、とにかく二条一筋。

追いかけられると男は逃げたくなる、とか巷でよく言いますが
女とて同じですよね。

法親王のように、一途に自分だけを思われるのも怖くて、
でも御所様たちのように、自分以外の女性がいるのも嫌で。
そんな、二条の身勝手とも言える思いが、現代にも通ずるリアルさです。




「思わぬ相手に抱かれて そなたは思い知る
 そなたが本当に愛しているのは 誰なのかを」 −第22話より


後宮 4 (4) (講談社コミックスキス)後宮 4 (4) (講談社コミックスキス)
(2007/06/13)
海野 つなみ

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男の嫉妬、恐るべし。
いや男性一般論でなく、御所様のがとりわけ、ですね。

上記の言葉の場面を初めに見たときは、
どんなプレイだよ!とつっ込みたくなったのですが
その根源にある切ない願いとそれが満たされない空虚さを思うと、
何とも言い得ぬものがあります。

歪みきった御所様による、裏切った二条への非情な「仕打ち」が
四巻最大の見所、かも。
(でもはっきり言って、女性としては許せないことばかり)




「この 後宮という鳥籠の中から そなたを解放してやる」 −第26話より

後宮 5 (5) (講談社コミックスキス)後宮 5 (5) (講談社コミックスキス)
(2007/11/13)
海野 つなみ

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上の思いが、御所様の最大の愛のかたちなのか。
だとしたら、何と悲しいものでしょう。

どこまでもすれ違う二条と御所様が
見ていて居たたまれなく、ひどく切ないです。


−海野つなみ | trackback(0) | comment(0) |


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